竹原市で進む空き家再生とチェックインのデジタル化

成果発表会の会場と登壇者
引用元:hacomono

広島県竹原市において、使われなくなった企業の寮を改修し、予約からチェックインまでをデジタルで完結させる無人型宿泊施設の取組が報告されました。この事業に参画した株式会社hacomonoは、2026年3月に開催された成果発表会への登壇にあわせて、愛媛県で培ったセルフチェックインなどの運営ノウハウを竹原市へ応用した経緯を竹原市の空き家活用・民泊DXの取組として公表しています。

この取り組みは、宿泊施設の不足と空き家の増加という地域の課題に対し、滞在環境を整えることで地域内での滞在時間を延ばし、消費の拡大につなげることを目的としています。ここで注目したいのは、この発表が人工知能(AI)による完全無人化をうたったものではなく、予約からチェックインまでの手続きをデジタルで完結させる無人型宿泊モデルの実践であるという点です。今回の発表では具体的なコスト削減率や稼働率などの詳細な数値成果までは確認できませんが、地域の遊休資産を活用する現実的な一歩として示されています。

セルフチェックインの導入後に残る現場のやり取り

予約やチェックインの手続きがオンライン上で完結する仕組みが整えば、現地に常駐して鍵を手渡すといった負担を抑えられると考えられます。一方で、小規模な宿泊施設を運営する現場では、チェックイン手続き以外の部分で人の手が離せない業務が依然として多く残ります。

典型的な場面が、宿泊客からの日常的な問い合わせ対応です。たとえば「宿の前に車は何台停められるか」「近くに夜間営業している飲食店はあるか」「予定より到着が1時間遅れそうだが問題ないか」といった質問は、宿泊の直前や当日に頻繁に寄せられます。こうした質問は過去の案内文や施設の利用規則に答えが含まれていることが多いものの、メッセージアプリや宿泊予約サイトのチャット画面をその都度開いて手作業で返信していると、担当者の業務が細切れに中断されてしまいます。

さらに、予約内容の変更や宿泊のキャンセル、返金に関わる依頼、あるいは夜間の設備トラブルといった緊急対応は、定型的な案内だけで済ませることはできません。責任者が直接判断して個別に対応すべき事項と、すでに決まっている施設の規則に沿って案内できる事項を明確に分け、現場の連絡窓口が混乱しない体制を作っておく必要があります。

予約情報と問い合わせ履歴をひとつの番号でつなぐ

こうした小規模宿泊施設における応対の負担を軽減するために、デノフでは既存の業務ツールを活かしながら情報をつなぐ仕組みを提案しています。これは特定のシステムを全面刷新するのではなく、予約ごとに割り振られる「予約ID」を軸にして、やり取りの履歴を整理する考え方です。

まず到着時刻や駐車場に関する定型的な質問に対しては、あらかじめ施設側が内容を確認した案内文や利用規則を知識ベースとして用意し、そこから文面案を生成して下書きを作成します。担当者はその下書きを確認し、問題がなければ送信ボタンを押すという流れをとることで、ゼロから文章を組み立てる時間を短縮できます。このとき、予約変更や返金の申し出、あるいは鍵が開かないといった緊急の連絡については、自動で回答案を作る対象から外し、直ちに担当者の通知画面へ転送するルールを設けます。

また、宿泊客が入力した予約情報に不備がないかを事前に点検する作業も重要です。施設側が連絡や案内のために必要と定めた電話番号や住所などの項目に抜けがないか、あるいはチェックイン予定時刻が施設の受入可能時間と矛盾していないかといった点を、予約データが取り込まれた段階で検知し、未記入や矛盾の候補として一覧表示します。複数の宿泊予約サイトを併用している場合に生じやすい同一予約の重複取り込みや、直前の変更・取消履歴についても、予約経路や予約IDなどをもとに候補を照合し、台帳へ反映する前に人が確認する仕組みを整えることで、二重計上や連絡漏れを未然に防げるかを確かめていきます。

月次の事務整理と税務判断の境界を明確にする

宿泊施設の運営では、日々の接客だけでなく、月末に訪れる集計事務も担当者の重い負担となります。月ごとの総宿泊人数、延べ宿泊数、直前の変更やキャンセルに伴う返金履歴などを、各予約サイトの管理画面から集めて整合性を取る作業には、多くの時間と細心の注意が必要です。

ここで大切なのは、データの突き合わせや履歴の整理という「事務作業の省力化」と、法令に基づく「税務の判断や計算」を切り分けて考えることです。宿泊データの件数や泊数を過不足なく揃える工程にはプログラムによる自動照合が向いていますが、どの宿泊が特定の税制の対象になるか、あるいは免税や軽減措置が適用できるかといった法的な判断を、AIによる推測に委ねるべきではありません。適用関係の確認や最終的な申告内容の確定は、AI任せにせず、制度の定めに従って人が行います。

小規模な宿泊事業者向けの実務支援として、デノフでは宿泊税の計算、月計表の作成、申告データの出力を支援するサービスである製品・サービスの「やどぜい」を先行利用のお客様に向けて提供し、一般公開に向けた準備を進めています。なお、前述した問い合わせ対応の下書きや予約情報の照合といった連携案は、本記事で考察した業務改善の提案であり、「やどぜい」の仕様として実装されているものや将来の搭載を確約するものではありません。現場の予約データと月次実務をどうつなぐかという検討は、個々の宿泊施設の運用体制に合わせて個別に進めていく必要があります。

小さな規模から効果を確かめる検証の進め方

業務改善の仕組みを導入する際は、いきなりすべての施設や予約経路に一括で適用するのではなく、限定された範囲で小さく検証を始めることが現実的です。最初から完璧な自動化を目指すのではなく、まずは担当者が目視で確認し修正する工程を前提とした設計にします。

検証にあたっては、1棟から数棟程度の小規模な運用環境を選び、問い合わせの確認から返信完了までにかかった時間、宿泊名簿の未記入や矛盾がどの程度事前に検知できたか、そして月末の予約照合で人の手による修正が何件発生したかといった指標を一定期間記録します。匿名化された過去の問い合わせ履歴や架空の予約データを用いて事前のシミュレーションを行い、日常的な手作業と確認の負担が実際にどれだけ軽くなるかを確かめることも有効です。

こうした客観的な記録を残しておくことで、異なる立地や客層を持つ他の小規模施設へ同様の手法を展開する際にも、問い合わせや予約の件数、運用期間といった業務量の違いを踏まえながら、共通の指標をもとに導入効果を比較検討しやすくなります。

現在の業務に合わせた連携と実装の相談

小規模宿泊施設のDXは、高価な統合パッケージを一から開発することだけが正解ではありません。すでに使い慣れている予約台帳や連絡ツールを可能な限りそのまま活用し、その間に生じる情報の転記や確認作業をピンポイントで補佐する構成を組み立てることが、運用の定着への近道です。

株式会社デノフでは、中小企業や地域事業者に向けて、Web・システム開発やAI活用支援を行っています。日々の問い合わせ対応でどの部分をテンプレートや生成技術で下書きし、どの範囲を人が慎重に判断すべきかという業務の仕分けから、予約データと事務処理をつなぐ個別のプログラム開発まで、現場の実態に合わせた設計を検討できます。現在の運用手順に無理な変更を加えず、手作業による負担を段階的に整えていきたいとお考えの際は、お気軽にご相談ください。