既存の業務システムやデータ基盤に蓄積された情報を、分析やAI開発の環境へどのように連携させるかは、セキュリティと運用の両面で重要な検討事項です。AWSは2026年9月28日、Amazon SageMaker Unified Studioにおいて、外部Apache Icebergカタログへの接続と、Amazon DocumentDB接続におけるIAM認証への対応を発表しました(AWSによる新接続機能の発表)。データベースのパスワードをノートブックや接続設定に保持することなく、ガバナンスの効いたデータソースへプロジェクト横断で接続できる手段が拡張されています。
接続先ごとに異なる認証方式と利用できる操作
今回追加された接続機能は、外部IcebergカタログとDocumentDBで前提条件や扱える操作範囲が異なります。
外部Apache Icebergカタログとの接続は、Iceberg REST仕様に従っていることが条件となります。対応するカタログ種別として、Snowflake Open Catalog(Polaris)、Databricks Unity Catalogのほか、仕様に準拠したカタログ向けのGeneric IRCが挙げられています。カタログ自体の認証にはOAuth2またはbearer tokenを用い、実データへのアクセスには払い出された短期のAmazon S3認証情報(vended, short-lived Amazon S3 credentials)を使用します。接続後は、Data Explorerでのカタログ・スキーマ・テーブル一覧や列情報、サンプルデータの閲覧が可能です。さらに、Visual ETLにおいて読み取り元や追記・上書きの出力先として利用できるほか、データノートブックからのクエリ実行にも対応しています。
一方、Amazon DocumentDB接続のIAM認証では、データベースのユーザー名やパスワードを接続設定やノートブックに保存せずに接続できます。接続自身が持つIAMロールを使用し、AWS Security Token Service(AWS STS)経由でDocumentDBが検証を行う仕組みです。こちらの利用には、TLSを有効にしたAmazon DocumentDB 5.0以降のインスタンスベースのクラスタが必要となります。利用可能な範囲としては、データノートブック、Data Explorer、接続テスト(Test Connection)、そしてVisual ETLのデータプレビューが示されています。
開発環境におけるプロジェクト管理と接続の分離
これらの接続機能を利用する基盤となるSageMaker Unified Studioは、AWSのデータ、分析、AI、機械学習サービスを単一のインターフェースに統合した開発環境として位置付けられています(公式ユーザーガイドによる開発環境の解説)。
Unified Studioでは、管理者がアクセス可能なユーザーやグループを管理し、チームが利用する計算リソースなどを準備します。管理者にアクセスを付与された利用者はプロジェクトに参加し、そのプロジェクト内でデータや計算作業、各種リソースを作成・共有しながら共同作業を進める構造になっています。そのため、外部カタログやデータベース自体のアクセス権限だけでなく、どのプロジェクトで誰が作業を行い、どの接続リソースを共有するのかという、プロジェクト側の利用管理もあわせて設計することが求められます。
国内業務を想定した段階的な検証の進め方
社内に分散したデータをAI活用や分析基盤へ接続する際は、いきなり広範なデータを連携させるのではなく、対象業務と必要な操作を絞り込んで段階的に確認することが現実的です。
例えば、受注明細を外部Icebergカタログで管理し、日々の業務記録をDocumentDBに蓄積している国内の卸売業を仮定します。分析やAI活用の下準備として、まずは受注明細の一部をUnified Studioの検証用プロジェクトから参照するケースが考えられます。この場合、外部カタログがIceberg REST仕様を満たしているか、OAuth2認証や短期S3認証情報の払い出しに対応できるかを確認した上で、Data Explorerでのスキーマ確認やノートブックからのクエリといった参照系の操作から検証を始めます。
DocumentDBにある業務記録も併せて利用する場合は、管理担当者にクラスタのバージョンが5.0以降か、インスタンスベースでTLSが有効になっているかを確認します。その上で、接続テストやVisual ETLのデータプレビューを用いて、認証情報がSTS経由で正しく検証され、必要な記録が参照できるかを確かめていく進め方が考えられます。プロジェクトの利用者を管理する担当と、接続先の認証・権限を管理する担当をあらかじめ明確にしておくことで、権限不足や設定不備が発生した際の原因特定も容易になります。
データ連携と業務活用の設計に向けたご相談
新しい接続機能を活かして既存データをAIや分析に結び付けるには、ツールの設定だけでなく、業務で本当に必要なデータの抽出や、更新処理を伴う場合の安全性の確保など、前後の業務フローとシステム連携の整理が欠かせません。
デノフでは、Webサイトや業務システムの設計・開発・運用保守から、業務の整理、AIを活用する業務の選定、ツールの定着までを一貫して支援しています(デノフのサービス案内)。既存データ基盤の連携方針の整理や、小さく検証を始める実装範囲の検討など、ご依頼内容が固まっていない初期の検討段階からご相談を承っています。社内データの活用やシステム連携の進め方でお困りの際は、デノフへの相談窓口よりお気軽にお問い合わせください。



