広島県の新プラン策定と、県民意見に見る「相談知見の共有」への要望
広島県は、全庁共通の指針として従来の2計画を統合・更新した広島県デジタル・AI推進プランの策定についてを公表しました。取組期間は令和8年度から令和10年度までの3年間とされ、急速な技術進展を踏まえた柔軟な見直しとともに、持続的なDX推進の基盤として人材育成、データ基盤整備、AI活用環境の整備、セキュリティ強化が掲げられています。
この計画策定に先立って実施された意見募集の結果では、地域の現場に直結する要望が確認できます。「広島県デジタル・AI推進プラン」(素案)に係る意見への対応についての意見19において、公民館等で実施されている高齢者向けのIT相談では類似の相談事例が多数存在するため、相談内容を蓄積・共有できる仕組みがあれば住民支援に役立つという意見が掲載されました。これに対し県は、地域におけるデジタル活用による知見の共有について、今後の施策を検討する際の参考とする方針を示しています。
提示された資料において県が示した回答は、今後の施策を検討する際の参考とする方針にとどまるものです。資料で確認できるのはこの回答段階までですが、公民館などのIT相談に関して事例を蓄積・共有する仕組みを求める意見が確認できます。
個人情報ではなく「動作環境」と「公式手順」を残す記録の設計
地域でのIT相談、特にスマートフォンの操作案内などを想定した場合、後から手順を再利用するための共有記録には、相談者の個人情報を含める必要はありません。担当者間で共有して再利用すべきなのは、どのような環境でどんな操作を行い、どの公式手順を確認したかという技術的な事実です。
デノフでは、相談事例を手順書として再利用するための仮定例として、次の要素を1行の記録にまとめる形を提案しています。まず「質問の概要」として何を解決したかったのかを明確にし、対象となった端末の「機種」「OSバージョン」「アプリのバージョン」を記録します。スマートフォンの操作手順はOSやアプリのアップデートによって画面配置や名称が頻繁に変わるため、どの環境で確認されたものかが分からなければ、別の端末では再現できない可能性があるためです。
さらに、案内時に参照した「公式サポートページなどのURL」と「確認日」、そして実際の「対応結果」を残します。相談員の独自の記憶ではなく、公式の参照先と日付が紐づいていることで、後から別の相談員が同じ質問を受けた際にも、記載された手順が現在も通用するかどうかを公式情報に照らして再確認する手掛かりになります。
まずは既存の表計算で試し、必要に応じてAI検索を検討する
このような事例共有を始める際、最初から専用システムや高度な検索AIを導入する必要はありません。まずは一般的なクラウド表計算ツールなどを使い、上記の項目に沿って少数の事例を記録してみることから始められます。
実際に運用してみると、キーワード検索や条件の絞り込みだけで十分に過去の対応例へたどり着けるかどうかの確認が可能です。既存の表計算で検索しづらい言い回しの揺れが多い、類似の質問が増えすぎて適切な行を探すのに時間がかかる、といった具体的な課題が確認できて初めて、検索画面の個別開発やAIによる候補検索・要約機能の追加を検討する判断が立ちます。
もしAIによる補助を取り入れる場合でも、AIに直接操作手順を生成させるのではなく、蓄積された記録から関連する候補を提示させ、相談員自身が元の公式手順や確認日を目視で確かめて案内する構成にしておくことで、誤った情報の案内を防ぎやすくなります。
古い手順の陳腐化を防ぐ「確認担当」と更新運用のルール

手順の蓄積を継続する上では、記録が増える一方で古い情報が放置され、現状のアプリ仕様と合わなくなる課題が想定されます。蓄積した仕組みを継続して実務に役立てるためには、記録を残すルールとあわせて、定期的な見直しの担当者をあらかじめ決めておくことが重要です。
例えば、記録から半年や1年などの一定期間が経過した項目や、OSの大型アップデートがあった時期に、リンク先の公式手順が変更されていないかを点検する担当者を定めます。また、別の相談員が過去の記録を参照して案内した際に画面配置などが変わっていた場合は、対象の利用環境と現行の公式手順を改めて確かめ、操作手順や対応結果の記録を訂正した上で確認日を新しい日付に更新する運用を取り入れます。現行の環境で改めて確認できていない記録については確認済みとして扱わず、古い情報と区別できる状態にしておくことが大切です。
記録の手順が常に誰かの手で確認・更新される流れが現場に定着してこそ、交代したばかりの相談員でも安心して参照できる相談知見の基盤です。
相談業務の整理とシステム連携のご相談
地域のIT相談や窓口業務において、対応記録をどのように整え、どの範囲を共有すべきかという業務整理は、ツールの導入以前に重要な工程です。入力項目が多すぎれば現場の負担になり、少なすぎれば再利用できません。
株式会社デノフでは、業務プロセスの整理から、要件に応じた業務ツールの開発、AIを活用する業務の選定や導入支援までを一貫して行っています。既存の表計算ツールを活用した小規模な運用設計から、将来的な検索・更新画面の構築、AIを活用した検索補助の試行まで、現状の運用体制に合わせた進め方の整理を承っています。業務内容に合わせた進め方についてはデノフのサービス案内をご覧いただき、お困りごとはデノフへの相談窓口よりお気軽にお問い合わせください。



