ブラウザ操作型AIによる一次チェックと人の最終確認

Google Cloudの公式ブログ(2026年10月27日公開)で案内された生成AI活用事例集(10月版更新)において、エイベックス株式会社の取り組みが紹介されました。同社は、APIを持たないレガシーシステムをウェブブラウザ越しに操作するAIエージェントを構築し、ピーク時に1日約1,200件に達する支払申請をAIが全件一次チェックしたうえで、人間が最終確認を行う二重体制を運用したとされています。

この発表で注目されるのは、APIを持たない既存システムに対してウェブブラウザ越しに操作するAIエージェントを構築し、業務フローに組み込んだ点です。ただし、公表されている1日約1,200件という数値はピーク時の対象件数であり、恒常的な処理能力や、不備を正しく検知した件数、作業時間の削減幅を示すものではありません。また、使用したモデルや具体的なチェック項目、操作権限の詳細までは資料で触れられていないため、自社で検討する際は自社の業務条件に即して冷静に設計する必要があります。

APIの有無に応じた接続方式と役割の境界線

エイベックスの事例では「APIが存在しないレガシー環境」という制約への対応としてブラウザ操作が選ばれました。しかし、自社で同様の確認業務を自動化する際には、最初からブラウザの自動操作を前提にする必要はありません。まずは対象業務で公式なAPIが提供されていないか、CSVや帳票データの出力機能で代替できないかを確認することが先決です。ブラウザ操作では画面構造の変更やセッション切断への対処が運用上の論点となるため、自社の既存システムが持つ接続条件や運用条件を踏まえて接続方式を検討する必要があります。

そのうえで画面操作が必要と判断された場合でも、処理のすべてをAIに任せるのではなく、役割を段階的に分けることが重要です。自社で設計する際の考え方として、「画面から申請情報を読み取る処理」「社内規程に照らして不備の候補と理由を挙げる判断」「承認や支払実行を決定する判断」の3つに分解する案が挙げられます。エイベックスの事例として公表されているのはAIが全件一次チェックを行い人間が最終確認するという体制であり、AIの操作範囲や確定権限の詳細は確認できません。自社での試行においてはAIを判断材料を揃える支援役とし、業務の確定権限は人が握る設計にすることが、レガシー環境での安全な導入につながる有効な方法です。

自社で試行する際の着眼点(仮定例)

既存システムの支払申請画面からAIエージェントの一次チェック候補提示を経て担当者の最終確認に至る、画面操作と確認の役割分担の提案図

実在の導入実績ではなくデノフが考える仮定例として、自社のWebシステムで支払申請を確認している企業が小規模な検証を行う場面を想定します。いきなり本番環境で申請の承認や差し戻しまで行わせるのではなく、まずはテストデータや過去の検証用申請を用いて、画面から対象項目を正確に読み取り、社内の確認ルールに沿った候補と判断根拠を画面上に提示できるかまでを試す範囲にとどめます。

この試行では、申請IDごとに確認項目、参照した証憑や規程の根拠、AIが提示した候補、そして担当者の最終判断をセットで記録していきます。件数の多さだけでなく、AIが見落とした不備はないか、問題のない申請に不要な指摘を出す誤検知はないか、画面の読み込み遅延や認証切れで処理が途中で止まった際にどう検知できるかといった検証が必要です。人が候補の根拠だけを見て即座に判断できるのか、それとも元の画面や紙の証憑をすべて見直す手間が生じているかを確かめることで、業務負担の軽減につながる実効的な分担範囲が見えてきます。

既存業務の整理と接続設計のご相談

画面操作を伴うAI導入では、高度な自動化を目指す前に、現場で実際に行われている確認手順の棚卸しと、既存システムが持つ接続条件の正確な把握が欠かせません。どのような項目を目視で照合しているのか、例外的な申請にどう対応しているのかを明確にしないままツールを導入しても、誤判定の修正や運用の手戻りが増えてしまいます。

デノフでは、Webサイト・業務システムの設計・開発・運用保守やAI活用支援を通じて、お客様の業務に合わせた自動化の仕組みづくりや導入の業務整理を行っています。現在の支払申請業務でAIに任せられる工程の選定や、既存システムのデータ取得条件の調査、一次チェックの候補と根拠を確認するための試作画面の検討など、安全に試行を進めるための具体的な設計支援が可能です。自社の既存システムにAI支援を組み込めるかお悩みの際は、デノフへの相談窓口よりお気軽にお問い合わせください。