クラウド上で稼働する業務システムでは、障害時の切り替えや再起動が正しく動作するかを事前に確かめる復旧テストの重要性が高まっています。しかし、テストを実行して合否を確認できたとしても、想定外の挙動が生じた原因の調査や、具体的な改善計画の策定には多くの確認作業が必要でした。
2026年10月15日、AWSは次世代のAWS Resilience HubとAWS DevOps Agentの連携を発表しました。詳細はAWS What's Newの発表資料で公開されており、AWS Resilience Hubの提供地域としては東京リージョンを含む複数のリージョンが案内されています。この連携により、復旧テストの結果確認や障害モード評価から、DevOps Agentによる調査を開始できるようになりました。
テストを観察するAI調査と指摘からのオンデマンドタスク
今回の連携には、大きく分けて二つの調査の入口が用意されています。一つは、復旧テストの実行に伴う調査です。Resilience Hub上でテストを実行すると、DevOps Agentの調査が自動的に起動し、テスト中のシステムの動きを観察します。そして、現れた症状、根本原因、影響範囲、さらにApplication Recovery Controllerによるリージョンスイッチなどの観測された復旧動作を整理した構造化分析を返します。
もう一つの入口は、Resilience Hubの障害モード評価で検出された指摘からのオンデマンドタスクです。コンソール上に表示された指摘の文脈をそのまま引き継いでDevOps Agentに対話形式で質問したり、追加の調査を行ったりしながら、緩和策の計画を立てることができます。利用を開始するには、Resilience Hubコンソールで対象のサービスを選び、サービス設定でDevOps Agentを構成したうえで、評価の指摘や復旧テストから起動する手順が示されています。
復旧目標と依存関係に基づくテストの仕組み
DevOps Agentが分析対象とするテストは、どのような前提で動いているのでしょうか。AWS Resilience Hubの製品概要によると、本サービスはシステムの構成やサービス設定、定義されたRTOやRPOなどの復旧目標に基づいて事前構成されたテストを提供します。ゼロから障害試験のシナリオを組むことなく、制御された障害を注入して合否を検証できるのが特徴です。
また、アベイラビリティーゾーンやリージョンといったAWSの障害分離境界をまたぐ復旧だけでなく、依存先が失敗した際の耐障害性も検証の対象です。Resilience Hubには依存関係の検出機能があり、ワークロードが依存する他のAWSサービスや内部エンドポイント、第三者システムを可視化する仕組みが備わっています。このように構成や依存関係を踏まえてテストが用意されていることは、DevOps Agentの分析から原因や影響範囲を把握する際にも、結果を読み解く前提になると考えられます。
国内の業務システムへ応用する際の考え方
この仕組みを自社の運用に落とし込む場合、まずは業務の復旧条件とシステム側の判定をどう結び付けるかが論点になります。
たとえばAWS上で稼働する予約受付システムを仮定してみます。外部の決済APIやデータベースの通信遅延といった依存先の障害を注入し、障害発生中および復旧後に予約受付業務が正しく再開できるかを検証するケースが考えられます。テストツールが「合格」を返したとしても、業務視点では二重予約の防止や決済データの整合性確認、未完了データの再処理手順が整っていなければ、真に復旧したとは判断できません。
そこで、Resilience Hubの合否結果に加えてDevOps Agentが出力した構造化分析を確認し、どのコンポーネントがどう復旧動作をとったのかを把握します。その内容を自社の予約台帳や決済ログの状況と突き合わせることで、「テストは通過したが、業務再開手順に補足が必要」「リトライ処理のタイムアウト値を見直すべき」といった具体的な改修候補を整理しやすくなります。
自社運用へ組み込む際の確認事項と相談の進め方
一方で、発表資料で確認できるのはコンソールからの構成と起動手順であり、自社の運用へそのまま組み込めるかは慎重な確認が必要です。DevOps Agentが参照するログやメトリクスの詳細な権限、データの保持期間、自社で利用している個別リソースへの対応状況などは個別に確かめる必要があります。また、DevOps Agentが提案した緩和策を適用する際の承認手順や、既存の課題管理ツール・保守記録への自動連携についても、標準機能の範囲外であれば個別の連携手段を検討することになります。
まずは影響範囲を把握しやすい単一のサービスや検証環境を対象に、業務上停止すると困る処理と依存関係を整理したうえで、小規模にテストと分析の出力を確かめてみる進め方が現実的です。
デノフのWeb・システム開発およびAI活用支援では、既存業務システムの構成や運用手順の整理から、障害発生時に確認すべき業務フローの明確化、AIツールを保守・調査補助へ組み込む実装範囲の検討まで対応しています。障害テストの結果を日々の保守や改修管理へどう落とし込むべきか迷われている場合は、デノフへのお問い合わせ窓口よりご相談ください。対象業務の切り分けから具体的な連携範囲の整理まで、現状の運用に合わせて支援します。



