短期記憶の課金がイベント定額からデータ従量制へ改定

2026年10月12日、AWSはAmazon Bedrock AgentCore Memoryにおける短期記憶(Short-Term Memory)の課金体系を刷新し、従来のイベント単位の定額方式から、取り込み・取得・保存のデータ量に応じた従量課金へ変更したと発表しました。詳細はAWS公式発表「Announcing consumption-based pricing for short-term memory in Amazon Bedrock AgentCore」で公開されています。

AgentCore Memoryでは、短期記憶がセッション内の文脈維持を担い、長期記憶がセッションをまたぐ永続的な知識の保持を担う構造になっています。今回の改定対象は短期記憶であり、長期記憶の料金は変更されていません。なお、発表は2026年10月12日付ですが、公式の料金表では新単価の適用日が2026年10月6日付と記載されており、発表日と料金表の適用表記が分かれています。

取り込み・取得・保存で異なる課金基準と最低課金サイズ

改定後の短期記憶は、以下の3つの区分で計算されます。

取り込み(Ingestion)は1GB当たり1.00米ドル、取得(Retrieval)は1GB当たり0.20米ドル、保存(Storage)は1GB月当たり0.10米ドルです。ここで注意が必要なのは、取り込みと取得にはイベントごとに「最低12KB・最大64KB」という課金対象サイズが設定されている点です。たとえ実際のイベントサイズが数KB程度と小さくても、取り込みや取得の計算上は1イベントあたり最低12KBとして計算されます。なお、64KBは課金対象サイズの上限として示されている条件であり、APIで保存可能なデータサイズの上限とは区別して捉える必要があります。

一方で、保存料金の計算にはこの最低課金サイズは適用されず、イベントの実サイズが基準となります。Amazon Bedrock AgentCore Pricingによると、保存料金は各イベントの実サイズをもとに、設定されたTTL(Time to Live)の期間にわたって時間比例で計算され、時間単位で課金される仕組みです。AWSの発表でも、メモリリソースに短いTTLを設定することで保存費用を抑えられると説明されています。

問い合わせ対応業務における履歴の役割分担(仮定例)

この課金条件を踏まえると、業務AIへ渡す文脈と、保存する期間の設計が重要になります。国内の卸売会社が受注に関する問い合わせ対応で、回答案を生成するAIエージェントを試験導入する場面を仮定して考えてみます。

顧客とのやり取りでは、過去の注文履歴や配送状況の照会結果など、対応中に参照したい情報が存在します。これらをすべて頻繁に短期記憶へ取り込み、細かく取得を繰り返すと、イベントごとの最低課金サイズ(12KB)が都度適用されるため、実データ量の合計以上に課金対象量が膨らむ可能性があります。また、対応が完了した後も短期記憶に長い保持期間を設定したままにすると、実サイズに応じた保存料金が時間比例で発生し続けます。

こうした業務では、対応中の文脈維持に必要な情報だけを短期記憶に渡し、確定した対応履歴や注文情報は既存の問い合わせ管理システムや基幹システム側へ永続的な業務記録として保管する、という役割分担が有効です。業務上の参照期間を満たすよう短期記憶のTTLを設定して不要な保持を抑える案を検討する際は、TTLの設定可能範囲や変更時の挙動をあらかじめ確認しておくことが前提となります。ただし、短期記憶の費用はシステム全体の一部に過ぎず、モデルの推論費用や実行基盤などを含めた全体設計の中で評価することが不可欠です。

自社での整理手順と連携実装の相談

問い合わせ対応AIの導入や改善を検討する際は、まず日常業務のどの工程で過去の経緯を参照しているかを洗い出します。そのうえで、AIに参照させるイベントの発生頻度やデータサイズ、読み出し回数を把握し、一次的な文脈情報と永続的な業務記録の境界を明確に整理することが推奨されます。検証を進める際は、個人情報を除いたテストデータを用い、保持期間や読み出し範囲を調整しながら必要な回答精度が保たれるかを確かめると安全です。

デノフでは、Webサイト・業務システムの設計・開発・運用保守やAI活用支援を提供しています。社内業務の整理からAIを活用する領域の選定、既存の業務システムと連携させたデータ設計や自動化の仕組みづくりまで、現場の運用に合わせた実装範囲の整理を支援しています。問い合わせ対応AIに渡すデータの切り分けや、既存システムとの連携方針について具体化を進めたい場合は、デノフの相談窓口よりお問い合わせください。