AWSは2026年10月9日、動画から構造化された時間情報付きメタデータを生成する動画理解モデル「TwelveLabs Pegasus 1.5」がAmazon Bedrockで利用可能になったと発表しました(TwelveLabs Pegasus 1.5 model now available on Amazon Bedrock - AWS)。

これまで膨大な動画ライブラリから特定の場面を探すには、あらかじめどこを探すべきか見当をつけておく必要がありました。AWSの説明によると、Pegasus 1.5は事前に検索用インデックスを作成したり取り込みパイプラインを構築したりすることなく、動画内の映像、音声、画面上のテキストを1回のパスで解析します。利用者が編集の区切りや話者交代、スポーツのプレー、ブランドの登場といった抽出対象を定義すると、モデルが該当する場面を動画全体から探し出し、タイムスタンプを付与して返します。

抽出定義と返却データの仕組み

業務システムとの連携を検討するうえでは、どのように項目を指定し、どのような形式で出力が返るかを把握しておく必要があります。Pegasus v1.5 - Amazon Bedrockの公式モデル仕様によると、時間情報付きのメタデータを生成するには、リクエストの解析モード(analysis_mode)に「time_based_metadata」を指定します。

このモードでは、抽出対象の構造を宣言するsegment_definitionsの指定が必須です。segment_definitionsには、抽出する区間の種類を示すidや説明(description)に加え、各区間に設定させたいフィールド名、データ型、フィールドの説明を定義します。推論が完了すると、レスポンスのsegments配列に、宣言したフィールド値とともに開始秒と終了秒を持つ時間範囲が格納されて返却されます。

また、システム連携における例外処理や受け入れの判定として、公式仕様には2つの重要な確認項目が示されています。1つは、指定した定義のうち処理できなかった項目を通知するdefinition_errorsです。すべての定義が正常に適用された場合は空の配列が返るため、リクエストした定義が処理されたかどうかの把握に利用できます。もう1つは生成の終了状態を示すstopReasonで、制限に達せず正常に出力を返した「stop」と、最大出力トークン数に達して途中で打ち切られた「length」を区別して受け取ることができます。

入力制限と推論経路の確認

研修動画などの実データを扱う際には、入力仕様とデータの処理地域に関する制約を事前に整理しておく必要があります。

公式仕様において、S3を経由した動画入力は、動画の長さが最大2時間、ファイルサイズが2GB未満という制限が定められています。長時間の研修や大容量の高解像度動画を扱う場合は、あらかじめこの上限に収まるようにファイルを分割または圧縮して配置する前処理が求められます。

さらに、Pegasus 1.5は単一リージョン内でのオンデマンド推論に対応しておらず、クロスリージョン推論のみの提供です。呼び出し時にはUS地域の地理的推論プロファイル(us.twelvelabs.pegasus-1-5-v1:0)またはグローバル推論プロファイル(global.twelvelabs.pegasus-1-5-v1:0)の指定が必要です。社内の情報管理規程やセキュリティ方針に照らし、対象の研修動画を該当地域へ送信して処理できるかどうかをあらかじめ確認しておくことが欠かせません。

国内業務への応用:研修動画から工程別記録を教材管理へ渡す仮定例

これらの仕様を踏まえ、国内の設備保守会社が社内研修動画から工程別の記録を作成し、既存の教材管理システムへ登録する場面を仮定例として考えてみます。

例えば、現場の点検作業を記録した研修動画に対し、「作業工程名」「説明内容の要約」「注意事項」といったフィールドを持つ区間定義をsegment_definitionsとして設定します。Pegasus 1.5を呼び出すことで、作業工程ごとの時間範囲と要約テキストが構造化されたデータとして得られます。

ただし、日本語の専門用語や現場特有の作業内容に対して、期待どおりの精度で時間範囲や要約が抽出されるかは、実際の動画を用いた検証が必要です。また、APIレスポンスのdefinition_errorsが空でstopReasonがstopであっても、それはモデルの処理が正常に完了したことを示すのみであり、抽出された工程の過不足や作業内容の正確性を保証するものではありません。

そのため実務では、いきなり教材管理システムへ自動登録するのではなく、抽出された時間範囲から元動画の該当箇所を再生して確認できる簡単な照合画面を挟む構成が現実的です。担当者が動画を見ながらAIの提案した工程名や要約を点検し、確定ボタンを押したデータだけを既存の教材管理システムへAPIやCSVで渡すという運用を設計することで、確認手順を整えながらデータの正確性を確かめる進め方が考えられます。実際の確認負担や記録の精度は、扱う動画の内容や点検方法に応じて検証していく必要があります。

標準仕様の範囲と自社環境に合わせた検討領域

Pegasus 1.5の公式仕様でカバーされているのは、リクエストによる抽出項目の定義、時間範囲付きのメタデータ返却、処理エラーや終了状態の通知、S3からの入力受付、クロスリージョンでの推論実行までです。

一方で、対象動画のS3への配置、推論結果を受け取って元動画と照合するインターフェース、担当者が修正したテキストの保存、既存の教材管理システムが持つ登録形式へのデータ変換といった部分は、自社の業務環境に応じた検討が必要です。既存システムの機能や登録手順を確認したうえで、現行ツールの設定変更や標準機能で対応できるか、あるいは個別の連携や開発が必要かを判断していくことになります。

まずは現行の教材管理で管理している項目が動画から観察可能な内容かを整理し、短い動画で抽出定義を試すことから着手するのが手堅い進め方です。

デノフへのご相談について

動画をはじめとする社内データを活用した業務の効率化では、AIモデル単体の性能評価だけでなく、人がどこで確認を行い、既存のシステムへどうデータを受け渡すかという前後の運用設計が成果を左右します。

デノフのサービス案内でもご紹介しているとおり、デノフでは業務の整理からAIを活用する業務の選定、ツール選定、社内システムやWebアプリケーションの要件定義から開発・運用保守までを一貫して支援しています。

「研修動画から取り出したい業務項目の整理を進めたい」「まずは小さな試作で抽出結果を確認し、既存システムへの連携範囲を検討したい」といった具体的な要件整理や設計のご相談は、デノフへの相談窓口よりお気軽にお問い合わせください。