複数のクラウド環境で独自のAIモデルやオープンソースの大規模言語モデルを運用する場合、どのサーバーでどのような推論基盤が稼働しているかを把握し続けることは、セキュリティ運用上の課題になります。こうした運用課題に向け、AWSは2026年9月22日、AWS Security Hub AI Inventory adds Azure self-hosted instance supportにおいて、Microsoft Azureの自己ホストインスタンス上で稼働するAI資産の検出とカタログ化への対応を発表しました。
これまでAWS環境向けに提供されていた自己ホスト環境の検出機能が拡張され、中央のセキュリティチームがAWSとAzureをまたぐマルチクラウド環境において、AI資産とそのセキュリティ状況を継続的に更新される組織全体のビューで確認できるようになります。なお、発表本文において具体的なデータ更新間隔までは示されていません。
Amazon InspectorのSBOM分析による資産識別と基盤の関連付け

今回の機能拡張では、Amazon Inspectorが備えるソフトウェア部品表(SBOM)の分析機能が利用されています。この分析機能が拡張されたことで、Azureの仮想マシンにインストールされた推論エンドポイント、AIモデル、およびAIエージェントの識別が可能になりました。対象となるフレームワークの例として、Ollama、vLLM、Hugging Face TGIなどが挙げられています。
検出された各AI資産は、それが稼働している基盤インフラへと対応付けられ、関連するセキュリティ検出結果と結び付けられます。これにより、担当者はAWSとAzureの双方を対象として、AIインベントリの絞り込みやグループ化、検索を一元的に行えるようになります。
セキュリティ調査と対応フローへの接続における確認事項
AI資産がセキュリティ検出結果と結び付くことで、その後の調査や対処業務をどのように進められるかが重要になります。AWS Security Hubの製品案内では、関連付けられたセキュリティ検出結果を分析して迅速な対応が必要な問題を判断し、環境全体への潜在的な影響を調査する用途が説明されています。また、セキュリティワークフローの自動化や既存ツールとの連携といった機能も製品全体の特徴として挙げられています。
ただし、今回の発表資料では、Azure上のAI資産に固有の通知条件やチケット起票の設定手順、個別の外部ツールとの具体的な連携方法までは記載されていません。そのため、資産が検出された後にどのチームへどのような基準で連絡し、対応を進めるかという実務上のフローは、既存の社内ルールと照らし合わせて個別に設計する必要があります。
提供プランと利用にあたっての前提条件
導入を検討する際は、対象となるプランと提供リージョンの範囲を正しく把握しておく必要があります。発表によると、今回のAzure自己ホストインスタンス対応機能は、Security Hub Essentialsのプランに追加料金なしで含まれます。これは当該機能自体に追加費用が発生しないことを示すものであり、Security Hub全体の基本料金やAmazon Inspector、Azure側のインフラ費用などを含む利用全体が無償になるわけではない点に注意が必要です。
提供範囲については、Security Hubが提供されているすべてのAWS商用リージョンで利用可能と説明されています。一方で、Azure側の接続設定手順や必要となる権限、対応するOSやフレームワークの詳細なバージョン、Azure側の対象リージョン一覧などは発表資料で言及されていないため、実際の環境で事前検証を行う必要があります。
国内企業における資産整理と対応運用の検討例
この仕組みを自社の運用へ取り入れる場面として、たとえばAWS上の基盤で業務システムを動かしつつ、Azureの仮想マシン上で社内文書検索用の自己ホストAIを運用している国内企業を仮定してみます。
このような環境では、まず自社のAI利用実態を整理し、クラウド事業者の管理型APIを利用しているものと、仮想マシン上に独自に構築した自己ホスト環境とを分類することから始まります。そのうえで、社内の管理台帳にある業務用途や管理担当者と、今回のようなツールで検出される稼働基盤を照合し、情報の乖離がないかを確認していきます。
検出されたAI資産に対して脆弱性や設定不備が検知された場合、誰が影響範囲を調査し、どのような手順で修正や停止を判断するのかをあらかじめ決めておくことが欠かせません。標準機能の一覧化だけで運用が完結するのか、それとも社内のチケット管理システムやチャットへの通知といった個別連携が必要になるのかを切り分け、段階的に運用体制を整えることが現実的な進め方になります。
AI資産の整理やシステム連携のご相談
前述の仮定例のように社内で複数のAIツールを運用する場合、それらがどの業務で使われ、誰が運用や保守を担っているのかが見えにくくなるという課題が生じます。ツールの導入だけでなく、既存の社内システムや日々の運用フローとどう安全につなぎ合わせるかが、実務上の大きな論点となります。
デノフでは、Web・システム開発からAI活用支援まで、業務に合わせた開発と技術支援を提供しています。業務の棚卸しを通じたAI活用対象の選定やツールの選定、導入後の運用定着支援に加え、既存業務システムとの連携設計や保守体制の整理にも対応しています。
複数環境に分散したシステムの管理方法や、AIを安全に業務へ組み込むための役割分担について、まだ具体的な要件が固まっていない段階から整理を進めたい場合は、デノフへのお問い合わせ窓口よりお気軽にご相談ください。


