業務にAIを組み込む検討において、「どこから手を付け、どう安全に展開していくか」という順序の設計は重要な論点となります。広島県は、令和8年度から令和10年度までの3年間を計画期間とする次期プランの素案を取りまとめ、2026年8月26日から9月25日まで県民意見の募集を実施しています。公表された広島県デジタル・AI推進プラン素案の県民意見募集には、人口減少下での行政サービス維持や業務の変革を見据えた具体的な道筋が示されました。

素案において広島県は、AIを目指す姿の実現に向けた中核的なデジタル技術と位置づけています。展開にあたっては、県民への直接的な影響が大きくないと考えられる県庁内部業務から徹底して活用を始め、そこで蓄積した知見や経験を県民サービスへと広げていく考え方を明確に打ち出しています。

業務を3つの領域に分類し、リスクに応じて判断する

県庁内部業務から県民サービス関連業務、県民サービスへと段階的に活用を広げる3重の同心円と外向きの矢印を示した図
引用元:広島県

公表された広島県デジタル・AI推進プラン(素案)の資料では、行政のAI関連業務を利用主体とサービスの受け手の観点から次の3つの領域に整理しています。

  • 県庁内部業務:利用主体・受け手ともに職員であり、県民サービスに直接影響しない領域。規程等の自然言語による検索や要約、文書の下書き作成、生成AIの利用環境構築などが該当します。
  • 県民サービス関連業務:職員が利用し、最終的な目的が県民サービスにつながる領域。申請書類を複雑な条件に基づいて審査・チェックする一次判定や、施設のメンテナンス時期の予測などが挙げられています。
  • 県民サービス:利用主体が県民自身である領域。FAQや制度案内などの定型的な情報提供、申請書類等の入力支援、チャットボットやAI電話による対応などが想定されています。

素案では、業務の性質によって留意すべきリスクが異なる点にも言及されています。事実と異なる回答(ハルシネーション)やバイアスのある出力といった生成段階の課題だけでなく、判断の根拠がブラックボックス化して行政の説明責任を果たせなくなる事後対応のリスク、個人情報の取り扱いや知的財産権の侵害といった論点です。実際の利活用においては業務の性質に応じてリスク対応を判断する必要があるとしており、影響の小さい領域から知見を蓄積しつつ、リスクへの対処方針を見極めながら段階的に展開していく重要性が示されています。

民間企業が参考にできる「内部補助から進める」業務設計

広島県が示したこのアプローチは、一般企業の業務見直しやシステム改善にも通じる視点を含んでいます。例えば、地域事業者が社内規程や過去の問い合わせ対応を改善する場合、最初から顧客向けの自動応答として全面展開するのではなく、まずは社内にある過去ログやマニュアルを検索・要約し、担当者が確認するための回答案作成といった内部補助から始める進め方が考えられます。

このような内部補助の段階を踏むことで、問い合わせの種類や判断ルールを棚卸しし、AIに渡してよい情報と渡せない情報を整理する作業が無理なく進みます。また、生成された回答案を誰がどの基準で確認して最終回答とするかという、人の介在フローを実務に合わせて検証できます。

なお、実際の検討においては、既存の文書保管先や問い合わせ管理ツールとの接続可否、データの保存条件や権限設計、標準設定で対応できる範囲などは、利用する製品や環境ごとに個別の確認が必要です。標準設定で賄える領域と、個別連携や確認画面・履歴管理などの開発が必要な領域をあらかじめ見極めることで、過度なリスクを避けながら確実な運用設計につなげることが可能になります。

自社の業務に合わせたAI活用と連携の進め方

AIの導入検討では、「どの業務をどの単位で切り分けるか」「入力データと人による確認工程をどう設計するか」という事前整理が重要になります。

デノフでは、既存の業務フローを丁寧に整理し、確認責任を保ちながらAIを組み込む業務の切り分けや、既存システムとの連携範囲を検討するご相談を承っています。自社で進めるべき準備の整理や、無理のない検討の進め方については、デノフのサービス案内をご覧いただくか、デノフへの相談窓口よりお気軽にお問い合わせください。