カスタマーサポートの現場では、最初の窓口で要件を把握したあと、注文の配送状況や契約内容の確認といった個別システムの照会、さらには担当者への引き継ぎが必要になる場面が数多く存在します。単一のAIにすべての判断や社内データへのアクセスを集約させようとすると、プロンプトや連携ツールの肥大化、権限管理の難しさに直面しがちです。
2026年9月22日、AWSは公式発表のAmazon Connect Customer launches agent-to-agent collaboration - AWSにおいて、Connect Customer内外のAIエージェントが連携できる新機能を公表しました。Linux Foundationの技術委員会と協働して拡張されたオープンなA2A(agent-to-agent)プロトコルを用い、テキストまたは双方向音声でエージェント同士が協調して顧客対応を進められる構成です。
専門AIへの委任と統合された対応記録
今回の発表で注目されるのは、顧客との通話やチャットの最中に、別の専門AIへ処理を委任できる点です。たとえば受付窓口のAIが要件を聞き取ったうえで、不正リスク評価を行う専門AIに判定を任せたり、複雑な異議申し立てを別の担当AIへ切り替えたりといった分担が想定されています。
エージェント間の連携において課題になりやすいのが、それまでの会話の文脈や安全性の管理です。Connect Customerでは、AI間の文脈受け渡しを調整し、顧客体験の一貫性を保ちながら、対応に参加するAIを横断したガードレールやエスカレーション制御を一元的に提供すると説明されています。さらに管理者は、各AIが何を話し、どのツールを呼び出し、各ステップにどれだけの時間を要したかを、1つの問い合わせ記録で確認できます。どの段階で判断の遅れや誤りが起きたのかを追跡できる仕組みは、運用改善の大きな手がかりになります。
ルールに従う処理と有人エスカレーションの位置付け
生成AIによる柔軟な推論は魅力的ですが、顧客対応の実務には厳格さが求められる工程も存在します。AWSの公式製品案内であるAmazon Connect Customer - AWSでは、自然な会話体験を維持しつつ、本人確認やコンプライアンス上の告知のように厳密に進めるべき工程は、ルールに基づいた構造化ステップとして組み合わせる構成が説明されています。
また、AIだけで完結しない事態が生じた際には、すべての文脈を引き継いだ状態で人のオペレーターへ切り替える設計が重視されています。A2Aによる専門AIの呼び出しを組み込む場合でも、自由な推論に任せる範囲、ルールに従って厳密に行う本人確認、そして人へエスカレーションする条件を明確に区別して設計することが、安定した運用の前提となります。
国内業務への応用:受注照会を分担する仮定例

この仕組みを日本のEC事業者のカスタマーサポートに応用する場合、どのような業務整理が考えられるでしょうか。ここでは架空の例として、商品の配送状況に関する問い合わせ対応を考えてみます。
まず受付AIが顧客の問い合わせ内容と注文番号を受け付けます。続いて、配送状況の確認を担当する専門AIへ処理を委ね、受注管理システムのAPIを介して現在の配送ステータスを参照させます。最初の検証段階では、注文内容の変更やキャンセルといった更新処理まで一気に自動化せず、参照のみで回答できる範囲に絞り込むのが現実的です。注文番号が見当たらない場合や、顧客が変更・キャンセルを希望した場合は、それまでのやり取りの記録を保持したまま担当者へ引き継ぐフローにしておけば、誤操作のリスクを抑えながら運用の手応えを確かめられます。
自社で検討を進める際は、まず過去の問い合わせ履歴から、受付後に別システムへの照会が発生している定型業務を抽出します。そのうえで、外部AIへ渡す情報と渡してはならない機密情報を仕分けし、正常時・照会不一致時・通信失敗時に担当者が点検すべきログの形式をあらかじめ定めておくことが実務的な準備となります。
導入前に確認しておきたい仕様と条件
一方で、A2A連携を自社の環境へ導入するには、事前の技術検証が欠かせません。今回の発表内容には、対応リージョンの詳細や日本語でのテキスト・音声認識の動作条件、外部AIを登録・認証する具体的なAPI仕様は含まれていません。
また、自社の既存システムや外部AIと接続するにあたっては、セッションの維持方法やタイムアウト時の再試行ルール、外部へ送出されるデータの保持方針を個別に取り決める必要があります。設定画面だけでどこまで完結し、どの部分にAPI連携や認証基盤の個別開発が必要になるかを見極めることが重要です。
デノフへのご相談について
AIを活用した顧客対応や業務連携を検討する際は、いきなりすべての工程を自動化しようとせず、受付、専門照会、更新処理、有人判断の4つに業務を分解し、小さく試作を重ねることが成功への近道です。
株式会社デノフでは、デノフのサービス案内に記載のとおり、業務の整理からAIを活用する業務の選定、ツール選定、そして既存の業務システムや顧客管理との連携を見据えた開発までを一貫して支援しています。自社の問い合わせ業務のどこにAIを組み込めるか整理したい方や、外部システムとの接続範囲を具体化したい方は、デノフへの相談窓口よりお気軽にご相談ください。



